ときめきトゥナイト 二次小説 -ある日曜日
よく晴れた爽やかな日曜日の午後。
蘭世の買い物のため、二人は一緒に街に繰り出していた。同じ色のさりげなくお揃いの服を着て、アクセサリーショップやインテリア雑貨の店を巡った。そして買い物を済ませた後、近くの公園の一角に新しくできたカフェに入る。
「おしゃれでいい雰囲気のお店ね」
「そうだな。コーヒーもうまいし」
大きな開口の窓に面したカウンターの席。窓からは公園の木々が見え、新緑の葉がきらきらと輝いていた。蘭世はケーキセット。俊はコーヒー。蘭世のケーキを俊が一口貰うのが二人の流儀だ。仲良く食べていると、
「俊、蘭世」
突然誰かに名前を呼ばれ…振り向くと、
曜子だった。
おしゃれなニットワンピースに身を包んだ曜子が、朗らかな笑みをたたえ立っている。
「あ、やっぱり。後ろ姿見て、もしかしてと思って声掛けたんだけど、よかった」
「見てたわよ。仲良くケーキなんか食べて、相変わらずラブラブね」屈託のない笑顔で言った。
「えっ、ラブ、あ、」
意外なほど屈託なく言う曜子に、二人はなんと答えていいのか、言葉につまった。
曜子はそんな二人の表情を見て
「あっ、嫌味じゃないわよぉ。私のことはもうお気遣いなく。あんた達のことはもう全然気にしてないんだから。だって私も…」と言うと、
視線をレジの方へ向けた。
会計で支払いをしている力がいた。力は蘭世たちに気づき、その場で軽く会釈する。
「彼と付き合ってるの。私もあんた達に負けないくらい今すっごくハッピーなんだから。これから映画見て、そのあと夜はドライブ」
曜子は満面の笑みで言った。
束の間三人で、えーっ、いつの間にー、などと話をして…
曜子は振り返り、会計を済ませ待っている力に、今行くというように合図をすると、
「じゃあね。ごゆっくり」
力の方へ歩き出した。
蘭世は慌てて、曜子の背中に向かって言った。
「か、神谷さん、今度また家に遊びに来てね」
曜子は前を向いたまま手を上げ、指をオッケーの形にして答えた。
力の所へ戻ると、どちらからともなく伸ばした手を繋ぎ、店を出た。
美男美女のクールな後ろ姿の自然な手繋ぎ。かっこよく甘く素敵だった。
曜子たちを見届けると、カウンターの方へ向き直り、また飲みかけのコーヒーを飲んだ。
「ここで神谷に会うとはな。しかも奴とまた…驚いた」
「わたしもびっくりした。でもあの二人すごくお似合いで素敵だったな」
蘭世と俊もまもなく店を後にした。
両手いっぱいに増えた荷物は俊が持ち、都会のおしゃれな通りを歩く。
「神谷さん、力さんと幸せそうで良かった」
「ああ、俺も安心した」
そして蘭世は考えていた。
(お似合いだったなあ。そしてあんな笑顔で話し掛けてくれて…明るく振る舞ってたのかなあ、それともほんとにもう気にしてないのか。まあ、どっちでもいいや。気遣ってくれることが嬉しいし…今まで色々あったけど、ほんとよかった。こんな日が来るなんて…ありがとう神谷さん)
涙が出そうになる蘭世だった。が、
「ストップ」突然俊が言った。
赤信号?と思ったが…
「またいつもの思考パターンか?」
「えっ、あ、読んでた?」
「読むまでもねえよ。急に黙るんだから。いつものことだ。考えてることくらい大体かわかる」
「えへっ、ごめんなさい」
「別にいいけど…でもいつもの流れのにはのらないからな」
「いつもの流れ?」
「あ、いや、だから…」俊は口ごもる。
蘭世は少し赤くなった俊を見てわかった。
「ふふっ、じゃあ、今日は私から」
俊の腕を掴み足を止める。そして、周りに人がいるのもはばからず、蘭世はつま先立ちで背伸びをして、頬にキスをした。
夕暮れの都会の街は皆急ぎ足だった。赤く染まる二人は通りの真ん中で立ち止まったまま人混みに溶け込んでゆく。世界中息をひそめて二人見つめている…
「腹減った、晩飯どうする?」
「もおっ!」
酢豚にしようかな。
終わり
ときめきトゥナイト 二次創作 小説
ときめきトゥナイトそれから イラスト